2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

小田原駅西口タクシーの惨状

私は小田原西口のタクシーにはいつも困惑し、迷惑し、怒り、諦めている。とにかく客商売とは思えない対応なのである。 「○○幼稚園の横の坂を上がってください」 「えー? 坂なんかあっだが?」 「はい、社会福祉センターの信号を曲がらずにまっすぐ行く坂で…

オンライン小説「格差社会」8

三枝美由紀は若く見えるがもう四十歳だった。水商売の世界では「もう」四十歳、である。小田原駅から一〇分ほどの寂れた花街に、女の子が一人しかいない小さな店を持っていた。こんな安アパートに住んでいるので想像もしなかったが、店のオーナーなのだ。 と…

オンライン小説「格差社会」7

「ああー。そりゃー夢物語だわねえ。そんな根性あるの?」美由紀はそれでもチエミを面白いと思ったらしい。「あたし今日はもう支度して出なきゃいけない。明日は学校から何時に帰ってくる?」 「二時ごろ」進学校である小田原高校では、大学進学組に対して補…

オンライン小説「格差社会」6

そしてチエミは決めたのだ。一億円を貯金する。そのうえで、何をしたいのか考えようと。それには普通にOLや、工場勤務では話にならず、美容師やトリマーなどでもだめで、水商売をするしか方法はないとチエミは考えた。 もう一つ考えたことは、法律には引っ…

オンライン小説「格差社会」5

藤巻チエミの出勤前の身支度には、38のステップがある。シャワーを浴びてから、まず今日の衣裳を身につけ、汚れないようにケープをかぶる。スキンケアをしつつ、ドライヤーをかけ、メイクをする。安い女に見られないように、チエミはファンデーションでも口…

今日は不愉快だ…

ある会社が良い会社かどうかを考えるときに、「新卒で勤め続けている人がたくさん居ること」を指標にすることがある。学校を卒業後すぐ入社した人が定年まで勤め続けられることはいいことだ、という考え方だ。 私はこれは違うと思う。 問題は、新卒に限らず…

オンライン小説「格差社会」4

九時になると、アパートのペラペラのドアに鍵をかけて(泥棒が盗みたいものもないし、こんなペラペラなドアを破るぐらいわけはないので、鍵なんか必要ないといつも思うのだが)、錆の浮いた安っぽい外階段を降りた。 一階に住んでいる水商売の女が、めずらし…

オンライン小説「格差社会」3

藤巻恭子は自分と夫の秀夫の朝食に、トーストを出すことはかろうじて続けていた。秀夫が工場をリストラされるまでは、朝食には卵もサラダもつけたが、その後は月20万円で家族3人が暮らさなくてはならなくなった。今年の春に娘のチエミが家出同然に出て行って…

温泉ホテルは日本のラスベガスである

先日、志摩に旅行に行ったら、宝生苑という巨大温泉ホテルが、賢島のうらぶれた寂しい駅前にドカーン!とあった。私たちは志摩観光ホテルという、由緒正しい正統派ホテルに泊まったのだが、大浴場がないので、風呂はこの宝生苑で入るのだ。以前行った時もあ…

『怒らないこと』

この本はネパール人の仏教学者が書いたものだが、まずその流暢で、明晰で、理路整然として、説得力のある日本語に驚かされる。やっぱり勉強してるんだなあと感心してしまう。内容は、怒ることがいかに「損」で、「自分を傷つけて」いるか、だから怒るなとい…

男は「ええかっこしい」である

男は自慢するのが好きで、威張りんぼうで、どうしてあんたはそんなに自分を偉そうに見せたがるのと不思議になるが、そうかと思うと、笑ってしまうぐらい単純おバカなところもあるから、「アホ!」という感じで許せてしまったりする。そんな、えらいステレオ…

『ペルソナ4』

1月からずっとリストラでしんどくて、ストレス満開なのだが、家に帰ると『ペルソナ4』をやっていて、ずいぶん気分転換になっている。何がいいかというと、高校生たちがいい。純粋で素直で、ちゃんと反省するし、学ぶし、一生懸命だ。大人とぜんぜん違う。…

伊勢志摩旅行記4

最終日は、金のシャチホコを見ねばということで、名古屋城に行った。本丸御殿の復元工事というのが行われていて、2017年完成予定。大変なことである。お金もものすごくかかるに違いない。でも名古屋の人はそのへんのお金の算段は上手にするような気がす…

伊勢志摩旅行記3

今日で賢島を離れるので、英虞湾クルーズに乗ることにする。賢島駅の海岸側は、非常に寂しい。誰もいないし、店はシャッターを閉めているし、波の音がするだけ。こういう所が大好きなので、私はハッピーだ。クルーズが出発するまでの時間つぶしに、護岸壁み…

伊勢志摩旅行記2

志摩が好きなのは何と言ってもシーズンオフの静けさだ。静かなのが好きで小田原に引っ越したが、小田原だって十分都会だし、観光地だから、土日は賑わっている。シーズンオフの賢島には本当に誰もいない。ホテルの朝食にも5組しか来ていなかった。志摩観光ホ…

オンライン小説「格差社会」2

縄張りを荒らされると、たまに数人で取り囲んで、大声で罵ったりしている。藤巻にはそういう輪に入って文句を言う気力もなかった。いくら正しいことを主張したところで、収入が増えるわけでもない。 しかしタクシー運転手の数はどんどん増えていく。今年にな…

伊勢志摩旅行記1

1月からずっと18人の退職勧奨、いわゆるリストラを担当していて、ストレスがたまった。リストラは完了したけれども、今度はその余波で会社がガタガタしている。でもとにかく3日間休みを取って、家族と伊勢志摩の旅行に出ることにした。まず9時に猫2匹を動物…

オンライン小説「格差社会」1

小田原駅西口前広場、午前八時。藤巻秀夫は小型タクシーの七台目の列に、自分の営業車をつけた。 北条早雲像の横のタクシー溜まりに中型車が七台、小型車が七台。ロータリーの乗り場前に二台ずつ。九番目に順番がまわってくる。だいたい三〇分から一時間かか…

『一神教の闇』

『一神教の闇』という本を読んでいます。人に勧められたのですが、以前から日本人の宗教ということについて、興味があったので、買いました。 日本人は「宗教は?」と聞かれると、答えに困る人が多いです。仏教も神道もキリスト教も、本気で信じて真面目に活…

定年退職に思う

定年退職される方々に、社会保険労務士とミーティングしていただく機会を設けました。年金、健康保険、雇用保険、どれもけっこう面倒で複雑なので、プロに説明してもらおうということです。改めて62歳(私の会社の定年は62歳なのです)になろうとしている方…