旅行には行くべき

冬のイギリスに旅行に行った。当たり前だが、朝は9時ぐらいまで真っ暗だし、午後4時には日が暮れる。田舎のほうを回っていたので、景色はヒツジがいる草原ばっかりで、雨がしょっちゅう降る。生活は絶対、貧しい、慎ましい生活をしているはずだ。イギリスの強烈な富はロンドンに集中しているのだ。

U2のギタリスト、エッジが、アイルランドの経済についてtoiletと言っていたが、イギリスの田舎だって似たようなもんだろう。多くの人は狭くて暗い家の中で、寒い思いをしているのだ。

そんな中、相変わらず元気な中国人や中東人やインド人が、バカ高いモノを買いあさるのを眺めたり、昔の遺跡に自分の歴史の知識の無さを嘆いたりして、8日間を過ごした。なんだか楽しくなさそうに聞こえるかもしれない。でもとても楽しかった。

なぜかというと、やはり旅行には行くべきだと思ったから。それは美しい物や景色を見られるとか、そういう意味もあるけれども、最も意義があるのは、いつもと違った生活をして違った景色を見ることである。知らない場所に行って、さっさと行動しなくてはいけなかったり、ちゃんと荷物をまとめないといけなかったり、盗難に遭わないよう気をつけたり、どうしたら一番得で楽なルートなのか考えたり、他人の言うことをきちんと聞いていなくてはならない、知らない人にも、信用できそうな人かどうかを自分なりに判断して、道を聞いたりしなくてはならない、そういう経験を定期的にすることが、ものすごく重要だと思うのである。

つまりそれは、人間としての基本的能力の鍛錬である。勇気、行動力、判断力、いざという場合の覚悟、知識、経験、すべてが試され、強化される。これを人任せにしたり、旅行に行かずに毎日同じ生活をボーっと送っていると、老化が早まるし、生きていることに意義が見いだせなくなる。

私の義母は毎年4,5回は自分で企画して旅行に行くが、実にえらい。尊敬する。だから80歳近くなってもまったくボケない。