2011-01-01から1年間の記事一覧

ネイルという贅沢

ようやく以前の稼業に戻ることが出来たので、調子づいて、今日は堰を切ったように買い物をしてしまった。といっても、大した額ではない。失業する前は、もっと金遣いが荒かった。それに比べれば、まだまだである。しかし、高価な物を買ったり、長続きしない…

おおさか

土曜日から足かけ3日、大阪と京都をウロウロしている。夫は食い倒れが目的だし、私はピリピリした関東地方を離れたいというのと、徳島にちょっと用があるのだ。今回は小奇麗な大阪には全然行かず、難波、天王寺、通天閣、鶴橋といった、ディープなあたりを…

自業自得

なんだかんだ、悲劇に見舞われているうちに、4月になった。私には、日本全体が重苦しい不安に覆われているように見えるが、違う角度で見ると、別にどうってこともなく暮らしている人が大半なのかもしれない。なにしろ私自身が、急に世間が狭くなったので、…

東日本大地震に思う

3月11日に起きた地震で、日本中が少なからず動揺している。 ところが私は、いちばん苦しかったのがその前々週だったので、それほどココロにダメージがないのだ。 つまり、どん底が先に来てしまったから、そのあとの地震は、「もう、なんでもいいよ」と受…

ココロの断捨離

またまた、しばらくご無沙汰してしまったのだが、先週は、信じられないくらい苦しい1週間だった。おとといに、基本方針の大転換をして、今は気分が良くなっているので、安心してほしい。 何が起きたかといえば、なんとなく希望を持って待っていた某社から、…

就職活動雑記(2)

どうにか数社と話が進み、遅々とした動きながら活動はしているのだが、どこにしても、関係する人が多いので、何回も、いろいろな人に会わなくてはならない。その人々全部に、ある程度気に入られてYesと言ってもらわなくてはならないというのは、考えてみると…

就職活動雑記(1)

50歳からの就職活動は本当に大変である。私の場合、今まで仕事上や個人的なつながりのあった人々に助けられて、どうにか面接までは引っかかっているが、時間がかかることはもう、覚悟しないといけない。 面白いのは、「この人にお願いしてもムダだよね」と思…

オンライン小説2「規格外」33

夏休みのあいだに奈緒子が経験したアルバイトは五つを数えた。中型の運転免許を持っていたので、まず深夜の運転代行のアルバイトに採用された。二人でペアになり、酔った客を店まで会社の車で迎えに行く。一人は客の車を運転して家まで送り、もう一人は後ろ…

オンライン小説2「規格外」32

預金を全部かき集めて勘定すると、五十万円程度だった。アクセサリーやバッグを売ればけっこうな金になることは分かっていたが、それは最後の手段と考えた。 とりあえず大学を続ける前提で、授業の時間は確保し、時給千円週三日のオフィスKは続けるとすると…

ヘッドハンターの行動パターン

ここのところ、多数のヘッドハンターと付き合っているわけだが、ほとんど向こうには付き合っているという意識もないかもしれない。奴らがいったいどれだけの人間を相手にしているのか不明だが、実に希薄な人間関係である。 ヘッドハンターと会うと、だいたい…

あぶく銭で何をするか

先日、某ヘッドハンターの事務所を訪ねて、ミッドタウンのレジデンス棟に初めて入った。驚いた。 まず入り口はミッドタウンのショッピングエリアの中に目立たないように隠れていて、案内嬢に聞かないと分からない。そこで部屋番号を入力して開錠してもらうの…

無理やり開国させられた日本

久しぶりに転職活動をして分かったのは、ヘッドハンターのレベルも、候補者のレベルも上がっているのだなということだ。 5,6年前までは、ろくでもないヘッドハンターに本当にしばしば当たった。基本的にヘッドハンターは、人を右から左に流すだけで、年収の…

オンライン小説2「規格外」31

その日から大学は九月中旬までの長い夏休みに入った。奈緒子はビジネスホテルの小さなシングルベッドで目を覚ました。家から寝間着替わりのTシャツと短パン、いつもの枕も持ってきたので、落ち着いて眠れた。 シャワーを浴び、着替えてメイクしていると、ド…

オンライン小説2「規格外」30

マンションの玄関まで来ると、奈緒子は走りにくい大きなサンダルで必死で走り始めた。ここは手を抜いてはいけない。 真夜中すぎとはいえ東中野あたりだとまだ人通りがある。髪の毛を振り乱して走っていく奈緒子の姿が目撃されるようにした。 百メートルほど…

オンライン小説2「規格外」29

家に帰り着いたのは十二時近くだった。 リビングからプロ野球ニュースが聞こえる。宮田が寝入っていることを願って、覗いてみた。 起きていた。 「お帰り」機嫌の悪い声だ。短パンにTシャツ。締まった身体だからまだいいが、シュロの木のような毛深い毛脛が…

オンライン小説2「規格外」28

首尾よく岩崎とラブホテルに行くことができた。 これから関係が続くかは分からない。まだ今日はお互いに様子見のところがあって、ぎこちなく、十分に楽しんでいないから、あと数回は楽しみたい。 わりと平凡なんだな――というのが岩崎と寝るところまで行った…

オンライン小説2「規格外」27

前期試験が終わる頃になると、キャンパスにリクルートスーツ姿の学生が現れ始めた。まだ説明会はないが、OB訪問などに行くらしい。 あんな紺色のスーツがいったい日本全国で何枚売れているのだろうと奈緒子は思う。百万枚ぐらいだろうか。 一度、百合子の…

オンライン小説2「規格外」26

三人の生活が始まったが、予想通りほとんどすれ違いで、一緒に食事することも滅多になかった。朝、宮田が勤めに出るのは六時半で、まだ百合子も奈緒子も部屋から出てこない。昼間は二人は出たり入ったりで、五時に百合子は出勤する。宮田は十時ごろ帰宅し、…

オンライン小説2「規格外」25

宮田準一の父は家庭内では暴君だった。市役所の戸籍係に三十五年勤めたが、外ではおとなしく、評判は良くも悪くもない。これは性格の剣呑さがなんとなく出るので、いい人だねとも言われないが、特に勤務に支障はない、という意味である。 しかし家に帰ると、…

オンライン小説2「規格外」24

「お茶を飲みに行きませんか」 時事英語の授業が終わり、教室から出ようとしている岩崎に、奈緒子は声をかけた。岩崎が虚を突かれて振り向くと、無邪気な感じで微笑んでやる。岩崎がこの授業の後には講義を担当していないことは調査済だ。授業が終わったあと…

オンライン小説2「規格外」23

奈緒子をはじめ、水商売の世界の人間ほとんどが懸念を持って見守る中、梅雨の明けた七月に百合子は宮田とハワイの教会で挙式した。そのあとハワイに一週間ハネムーンで滞在するという二人に同行することなく、奈緒子はさっさと成田に帰ってきた。一泊二日で…

オンライン小説2「規格外」22

宮田は車を持っていないので、百合子は彼が住んでいる蒲田のアパートまでアウディで迎えに行った。母が出て行ってしまうと、奈緒子はイヤイヤながら身支度を始めた。 今日は大人しそうな品のいい服装なんか絶対にしないと決めている。ドラゴンの意匠をあしら…

オンライン小説「規格外」21

「愛する男との家庭」だの「まっとうな生活」だの、宗教だの健康法だの、すべて妄執であり幻想であって、そんなものを夢見るのは馬鹿げていると斥け続けてきた百合子が、とうとう憑りつかれたのは去年のことだ。それは「家族」という観念であった。「ヤキが…

オンライン小説2「規格外」20

徳永とは百万円で一回というような付き合いではなかったが、恋愛したとはいえない。二人とも大切にしているのが自己管理、金、装身具、トレーニング、美容といったことで、気が合ったが、あまりに似ていて底が見えてしまうため、お互いにバカにしているとこ…

オンライン小説2「規格外」19

地方出身の高卒の女というのは、上条百合子に言わせると、三重苦であった。実家も貧しかったから、このままでは貧乏のまま終わってしまう。最初は店員として就職したが、給料の安さにすぐコンパニオンになり、十九歳の時には銀座のクラブで働いていた。 百合…

オンライン小説2「規格外」18

そもそも、自分たち親子が「家族」だったことがあるか。ものごころついた時から、母は自分に独立した人格であることを求めた。子どもとして全面的に受け入れ抱擁してもらったことはない。「自分で決めなさいよ」「あなたが考えるの」「気に入らないなら来な…

オンライン小説2「規格外」17

奈緒子はこれまでおおむね、静寂の中で一人で生活してきた。 百合子は帰宅が午前二時とか三時とか、朝方になることもある。食事の用意や掃除、洗濯をしてくれたのは家政婦だが、奈緒子が帰宅したら帰ってもらうようにしていた。というのも、良い家政婦に当た…

オンライン小説2「規格外」16

「あいつは金にはシビアだから、そんなことは許さないだろう」奈緒子の教育費をきっちり毟り取られてきたことなど思い返して、父徳永は顔を顰めた。 「まあそこはそう思うわ。金でもめるだろうから、いずれ別れると思う。それが一年後なのか二年後なのか分か…

オンライン小説2「規格外」15

「百合子さんがどういうことになっているか、知っているんでしょ」 「まあね」徳永は気まずそうな顔をした。あまり考えたくない。ものごとはいつも真剣に突き詰めないことにしているのだ。 「私がそんな男と同居することについて、どう思ってるの? 七月から…

オンライン小説2「規格外」14

外は鬱陶しく梅雨が続いており、巨大ホテルの奥まった場所にある喫茶店も薄暗かった。徳永は奈緒子や百合子と会う時は、人目につかないこの場所を指定する。隠し子騒動は御免こうむりたいのと、間違いを防止するために、女によっていつも会う場所をそれぞれ…