『怒らないこと』

この本はネパール人の仏教学者が書いたものだが、まずその流暢で、明晰で、理路整然として、説得力のある日本語に驚かされる。やっぱり勉強してるんだなあと感心してしまう。

内容は、怒ることがいかに「損」で、「自分を傷つけて」いるか、だから怒るなというもの。

たとえとしてローソクが燃えるときは自分がまず燃えて、他のものを燃やす。だから怒って他人を傷つけよう、破壊しようと思う時は、まず自分が傷つき、破壊されているのである。これは非常に納得のいく、上手なたとえだ。

私も昔、ある人物への憎しみに燃えていたことがあったが、自分が胃潰瘍になってしまった。そんな時に、英語のテキストの中で"Hate destroys yourself."という文句に出会い、ああそういうことなんだと納得したのだ。

しかしこの本の中で、「たとえ誰かに斬り殺されても怒るな」というのがあるのだが、私はそれには反対だ。

斬り殺される時には、絶対抵抗する。力の限り。私の命を他人に好きにはさせないのだ。結果として、好きにされてしまうかもしれないが、抵抗するのが生き物の本能ではないか。

リストラされたら一銭でも多く会社からもらおうと戦うし、人にバカにされたらバカにされないように手を打つし、いじめられたら、いじめられないように作戦を練る。復讐までしようとは思わないが。

やっぱり仏教の人は輪廻転生を信じているから、斬り殺されても次の一生があると思うのかもしれない。