2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ら・ふろらしおん(仮名)マダムの独白6

25歳から8年間、水商売をして、銀座の端くれまでは行ったの。ちょうどバブルだったから、男どもがバカなお金の使い方をするのを、囃し立てて、もっと使わせて。一晩で100万使うなんて、けっこうあったわよ。あたしも稼いだけど、着物やエステなんかで大して…

ら・ふろらしおん(仮名)マダムの独白5

不動産屋には5年勤めて、一度別の不動産屋にスカウトされて転職したりもして、けっこう頑張っていたわ。客のウケは良かったわよ。美人だし、テキパキしているし、無理なものは無理ってはっきり言ってたし。あの頃はバブルに突入しようという時期で、五千万…

ら・ふろらしおん(仮名) マダムの独白4

その100万円は、アパートを借りたりしているうちに、なんとなく無くなってしまったんだけど、一つ良かったのは運転免許を取ったことよ。ここでまとまったお金を手にしていなければ、一生免許は取れなかったでしょうね。そして教習所に来ていた、免停を食らっ…

ら・ふろらしおん(仮名) マダムの独白3

当時の秋葉原は、今みたいなメイドカフェとオタクの街じゃなくて、普通の人が家電を買いに来る街。テレビでもエアコンでも、秋葉原で買ったものよ。そして秋葉原には喫茶店がほとんどなかったの。だから家電を見て回って疲れた人たちで、あたしが勤めたレス…

ら・ふろらしおん(仮名) マダムの独白2

産まれたのは三重と和歌山の中間ぐらい、近鉄の各駅停車しか停まらない駅から車で30分という、漁村。何もない、超、田舎。クジラ漁なんかやっていたの。今は出来なくなったけど。気候や環境としては安房鴨川に近いわね。だから懐かしくて住んでるのかも。で…

ら・ふろらしおん(仮名) マダムの独白 1

最近、うちのホテル、2階の和室は5000円台で出してるのよね。そうしないと客が入らない。なにしろ1年のうちで忙しいのは菜の花の季節だけ。あとはいつも客の入りは半分ぐらいか、3組なんて時もけっこうある。客室数は20あるから、死活問題よ。 でも、5000円…

ら・ふろらしおん(仮名) 8

その晩は、困ったのはやはり歯磨きで、しかたないから便器一つの共同トイレで磨いていたら、ガチャガチャガチャ!「開かない! 壊れてる!」と外で叫ばれた。「使ってますよ」と声をかけたら「あー、すみませーん」と声がした。 とにかくテレビを見たりして…

ら・ふろらしおん(仮名) 7

食後にはどこかのスーパーで買ってきたような小さなケーキが出て、コーヒー紅茶はセルフサービスであると言われた。見ると、コーヒーのみならず、紅茶を電熱器の上に置いている。あれは煮詰まってすごいことになっているぞ。お湯を置いてティーバッグを置い…

ら・ふろらしおん(仮名) 6

6時半から夕食で、私は1階の食堂に降りた。運動靴を履いた、小デブのウエイターが現れ 「こ、こ、こちらでございます」 と案内してくれる。思ったとおり、家族連れとカップルで満席だった。鏡張りの壁際の席である。一部にさりげなく使うのならともかく、広…

ら・ふろらしおん(仮名) 5

民宿でもこれよりはまだ近代的じゃないかという、洗面台すらない4畳半の和室に押し込められ、私は苦笑いした。ここで、私は外資系の会社のディレクターで、英語もペラペラ喋れるし、立派な学歴の持ち主なんだ、なのにこの部屋ななんだ、なんて威張ってもしか…

ら・ふろらしおん(仮名) 4

「本格フランス料理を味わえるアンティークホテル」の玄関に、スリッパが所狭しと散乱している光景は、写真に撮りたいぐらいだったが、とにかく「すみませーん」と声をかけた。 見回すと、何やら気味の悪いアンティークの人形や、古そうな品物がそこかしこに…

ら・ふろらしおん(仮名) 3

私が助手席に乗り込み、彼女がエンジンをかけると、大音量で、セリーヌ・ディオンだか何だかの絶叫型ポップスが襲った。彼女はあわてず騒がず、そのままの音量で絶叫を聞きながら、車をスタートさせた。 帰り道が退屈だから私を誘ったのだろうと思っていたの…

ら・ふろらしおん(仮名) 2

多くの田舎の駅がそうであるように、安房鴨川の駅前にも何もなかったが、運良く巨大なジャスコが目に入ったので、最悪が予測されるホテルに行く前に腹ごしらえをしようと考えた。「ワンカップ大関」の隣では食事をする気にならなかったのだ。しかし空腹では…

ら・ふろらしおん(仮名)1

特急電車が南房総に近づくと、視界が開けて明るい海が見える。東京で見る海とはまた違い、どことなく南国らしい風情があって、心躍る風景なのだが、電車内は、そうはいかない。なにしろ春休み最初の土曜日で、特急わかしお号指定席は満席、ほとんどすべてが…