亡き王女のためのパヴァーヌ

今日聴いた「亡き王女のパヴァーヌ」は美しかった。どこか遠くの雪山に、人が足を踏み入れたことのない、冷たく澄んだ湖があって、キラキラ輝いているような、演奏だった。

プロの演奏ではない。たぶん知的障害のある、小学生の少女が弾いたのだ。恥ずかしげに、こんな場所でピアノを弾いていいのかと言いたげに、発表会の舞台に上がった。しかしパヴァーヌを弾き始めると、すっかり落ち着いた。彼女はパヴァーヌが好きなのだ。

もちろんミスタッチもある、上手な演奏ではない。しかし彼女が自分の心のなかに、だれにも汚されることのない澄んだ湖を見つけたことが、感じられる演奏だった。彼女はその湖の美しさをもっと感じたくて、ピアノを弾いていた。王女は死んでも、透きとおるように美しいまま、存在し続けるのだ。

彼女のこれからの人生に、何があっても、この美しく澄んだ湖が支えになるだろうと、私は信じた。