2010-03-13から1日間の記事一覧

オンライン小説「格差社会」20

チエミのファッション・コーディネイトをしてあげようと原口が言い出したのは、店からの帰りがけだった。理由を聞くと 「なんかさあ、応援してあげてもいいかなあって思うのと、キミの顔ってね、やり方によってはすごく面白くなりそうなんだよな。でも普通の…

オンライン小説「格差社会」19

ゲイの男は、小田原のバイト先でも、キャバクラでも、たまにボーイや調理場として働いていることがある。彼らがゲイだということは職場では周知の事実だった。なぜか、分かってしまうものなのだ。 その中でのチエミの数少ない経験では、ゲイの男は清潔で、几…

オンライン小説「格差社会」18

渋谷の店では一月働いて手取り50万円、歌舞伎町では時給があがり、若干、同伴出勤や指名の手当が入り始めたので60万円を超えた。しかし出費も多く、3ヶ月で20万円残すのが精一杯だった。 出費は、チエミのいわゆる「武器」を調達し、磨くためで、必要な投資…

オンライン小説「格差社会」17

1ヶ月渋谷で勤めたあと、チエミは歌舞伎町の店に移った。自営業の富裕層の客が多いという噂を聞いたのと、最終目的地である銀座には自分はまだ早いと考えたこと、六本木は派手すぎて自分に合わないように思ったのだ。 移ってみてわかったが、歌舞伎町には確…

オンライン小説「格差社会」16

根底が「スケベ」であることは男全員に共通しているが、いろいろなタイプの客がいる。多いのは、自慢したいタイプで、仕事のこと、会社のこと、家柄、子供の学校、妻の出身校など、あらゆることを自慢する。よくそんなことが自慢できるものだと呆れてしまう…

オンライン小説「格差社会」15

初日にいきなり延長や場内指名が取れたのは、ビギナーズ・ラックというものだった。顔もルックスもそこそこのレベルでしかないので、いきなり人気者に躍り出ることは不可能だ。じっくりと男たちの歓心を買うように努力するしかない。それに知性を隠さなくて…

オンライン小説「格差社会」14

「エリカ」の初日の前に、チエミは佐緒里のアパートを引き払い、ビジネスホテルに移動した。佐緒里のアパートには二泊しかしなかったが、明らかに佐緒里は良い子ぶってチエミを引き受けるのでなかったと後悔している様子だった。このうえ、水商売をして夜中…