私の職業生活4

この会社を辞めた後、しばらく派遣社員をしたのだが、英語ができた(当時は読み書きだけだが)せいで、外資系にも派遣された。
まず驚いたのが、オフィスがゆったりと広く、1人1人の場所が確保されていることだった。日本の会社では、汚いねずみ色の事務机の、まさに90センチ幅の中で仕事しなくてはならなかったのである。当時はPCがなかったのでまだ良かったけれども、いまだに90センチ幅の中で、しかもPCを置いて仕事をしている会社もあるわけで、大変なことだ。外資系だと、だいたい1メートル50センチぐらいの幅は確保されている。
それに女性に制服を着せて、お茶を淹れさせようという考えはない。女性はそれなりに一人前に扱われている感じである。セクハラは当時から御法度だった。やっている仕事が庶務だってアドミだって、レスペクトされていた。いいなあーと思った。
そして改めて不思議に思った。日系の会社で黙って我慢して働いていたら、給料も安く、レスペクトされず、汚い狭いオフィスで戦い続けなくてはならない。しかしここに来るだけで、環境も収入も、段違いに改善される。
大事なのは、良い環境を手に入れたほうと、我慢しているほうに、能力の差はほとんどないということである。むしろ我慢しているほうが、我慢強くて日本の伝統的価値観から言えば優れているかもしれない。私の英語力なんて、当時は大したことなかったし、ただひたすら生意気なだけだった。
要するに私は、人生とは不公平なもので、欲しいと声を上げた人だけが欲しいものを手に入れるのであり、欲しい、欲しいと主張し続けなくては、いい環境は手に入らないのだと感じたのだ。そして「我慢は美徳、天は見ている」という考えを捨てたのだ。能力や資格があれば、努力さえしていれば、黙って働き続けていれば、いい環境が転がり込んでくると思うのは、絶対に間違いなのだと。そしてこの不公平な社会をうまく乗り切るしかないのだと。